からむコラム 2002年8月号
「行政の利便だけ、住基ネット」
一部の区や市を除いて、8月5日に稼動した住基ネットのメリットについて、政府は「住民票が全国どこでも取れる」と喧伝する。
転出届と転入届の際に住民票は1回の提出で済む(から、国民に利便だ)というが、住民はしょっちゅう住民票が必要なのか。
3年前(99年8月13日)の、「改正住民台帳法案」と同時に「通信傍受法案」が国会に上程されていた。
被害妄想的なマスコミはこの"盗聴法案"に気を取られ、"国民番号管理法"には、当時の小渕首相がプライバシーを守るための個人情報保護法を3年先には制定すると約束したためか、
あまり関心を払わなかった嫌いがある。
さて、個人情報保護法もない状態では、参加できないとする杉並区等には「引っ越したい」とか、
「住民票を移したいが」などの問合せがあるという。
ずいぶん短絡的な発想だが、自らのプライバシーを守るための、もっとも簡単な手段は住所不定(かつ無職)になることだ。
そうすれば税金を払う必要もないだろうし、気楽ではないか。もう一つの"防御"手段としては自らのデータ、
たとえば略歴・職歴などをある程度公表することである。隠すから他人は知りたがるのである。
税金といえば、この事務の簡素化とでもいいたげなネットワークシステムだが、市役所等の担当者を減らすという話も聞かないし、
逆に全国に「管理センター」を設けて、役人の天下り先を作るためのものでしかない。
片山総務相は「役人は善意の人(だから安心だ)」といったそうだが、自分のことは隠したいくせに、
他人のことを知りたがるのは人間の性(さが)。「小人、閑居して不善をなす」という。
"正直者"のコンピュータがそんな人間にかかっては、ひとたまりもない。
ところで、国民がこのシステムで住民票を取れるのは、来年の8月からだというのをご存知か。
役人はだれも、(自分もその一人であることを忘れて)国民のことなど思ってはいないのである。
似たような例がある。法務省がコンピュータ処理のために、それまで認められていた戸籍の俗字・略字などを"職権"で訂正できるとしたのは90年10月末のこと。
そのとき逆に、認めたものも多く(157字)、たとえば小渕元首相の"渕"などである。
「USJは日本の"9・11"」
雪印に続く日本ハムの牛肉偽装問題は、その立場にあれば誰でもやりそうな不正だが、
会社ぐるみではなく、3人の部長"個人"の判断というから(本日現在)、日本の会社人間としては、
信じられないくらい"立派"な態度ではないか。
さて、鳴り物入りで始まった大阪のテーマパークUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)が、
二年目に入って存亡の危機という。サッカーW杯の影響で客足が大幅に減っただけでなく、
7月に発覚したのは賞味期限切れの食材を扱ったり、水飲み器に工業用水を使ったり、
冷水器から基準値を超える一般細菌が検出されたりと、やることが、みな"偽装"(客をバカにした行為)である。
また今月には花火の火薬を制限以上に使うなど、安全が売り物のはずの、こちらは組織ぐるみの"犯行"であった。
まだ、行ったこともない私(もっとも、TDLもディズニー・シーも東京タワーも無縁)には、
どれくらい魅力的なところか分からないが、待ち時間が10分ですむと観客は大歓迎かと思いきや、
さにあらず。こういうところで混雑さを満喫できないのは、盆暮れの帰省で大渋滞する高速道路にうんざりしながら走るのと同じで、
日本人には物足りないのだろう。なにしろ「○○に乗るのに2時間も待たされてさぁ、参っちゃったよ」と他人に自慢できないからだ。
アメリカでも昨年の"9・11"以降、元祖ディズニーランドや観光地などでは客足が戻らなかったり、
飛行機で移動する人も減って航空会社も青息吐息、業界7位のUS航空は破綻したという。
テーマパークは一度、評判を落とすと、あっという間に"ローカル・パーク"に成り下るものだという。
東京の小田急「向ヶ丘遊園」は、東西のテーマパークに客を取られたとして廃園にしたが、
もう少し我慢すればよかったものを。
「のど元過ぎれば…」
3年前の夏、盆踊り会場で転んだ4歳の男の子が、くわえていた綿あめの割り箸がのどに刺さって死亡するという事故があった(東京杉並)。
救急車で運ばれた杏林病院(三鷹)の当直医師が男児を診察。意識がもうろうとし、嘔吐するなど頭蓋内損傷が疑われる状態だったが、
CTスキャンなどで頭部の検査をせず、消毒薬を塗っただけで帰宅させ、翌朝死亡したという。
これに対し、東京地検は業務上過失致死罪でその医師(34)を在宅起訴した(8月3日)。
一方、男児の両親(都立高校教諭51、妻45)は昨年1月、その医師と病院を相手取り、
過失があったとして慰謝料など約8千9百万円の損害賠償を求めている。
当直医師の対応が適切であったかどうかを論じる立場にないが、問題は分別盛りの両親が、
その時わが子をどのように"保護"していたかである。割り箸でも何でもくわえて歩く、
走るのは子どもの習性、転ぶなどとは考えないのが彼らである。
しかし、大人には当然予想できた場面である。手をつないでいれば、転びそうになっても助けられるはずだ。
人込みや回りの照明など、普段の状況とは違うという認識があったのかどうか。
医者の不手際は、転倒事故(両親の責任)の後である。転ばなければ、不手際は起こらなかったもの。
両親(良心)は、自らの"重大過失"を認めることが先ではないのか。それを棚に上げて? 訴えるのは、
"責任転嫁"もはなはだしい。死んだ子はさらに浮かばれないではないか。【これは、事故の第1報で持った感想である】
アメリカでは、肺ガンになったのはタバコの吸い過ぎだとタバコ会社を訴えたり、
最近も50年間ハンバーガーを食べつづけた男(56)が、肥満で心臓病になったのはファストフード店のせいだと、
マクドナルドなど4社を訴えたり、自分の非を棚に上げた訴訟が目立つ。
この男のセリフが振るっている。「ハンバーガーが肥満の原因になるとは3年前まで知らなかった」。
知ってから、まだ3年も食べつづけていたのはどういうことか。
そのうち日本も、アメリカのように訴訟天国になることだろう。
「すべてが金の世界―テレビ業界」
公演の二重予約(ダブルブッキング)をしていた人気狂言師が7月27日、
岐阜県可児市から東京・新宿コマ劇場へ移動するのにヘリコプターと小型ジェット機をチャーターして(50万円+65万円)、
何とか両方ともこなしたという。
しかし、狂言師にとって、115万円なんぞ安い宣伝料だろう、まさに"やらせ"(狂言)ではないのか。
いただけないのは報道陣が殺到したことで、何を演じたかの取材ではなく、
"お騒がせタレント"を追っかけただけのこと。それだけテレビにとって"おいしい"ネタだそうで、
"実況"したところもある。だが、「可児町には100人以上の報道陣が」と報ずる新聞も似たようなものではないか。
テレビ東京の、事務所荒らしをたくらむ窃盗グループに金を渡して、その現場を取材報道したのが"スクープ"だそうだが、
他局からも「35万円でスクープか、結構安上がりだな」という感想が漏れるほど、単にテレビ東京だけではない、
モラルもなく金銭マヒしたテレビ界の実態が暴露された。
しかも、その"事件"を警察に通報したというから、エセ正義感、仁義にもとる行為ではないか。
だから、"バレル"のである。
ところで、不景気な世の中、在京キー局が高収益を上げて好調な背景には、
下請けの制作会社との「あいまいな契約」が多く、「代金の遅れや減額」「番組の著作権も半数近くが局に握られ、
二次使用料なども見込めない」などの理由からと、経済産業省が行った調査「コンテンツ制作に係わる委託契約」から浮かび上がった。
中には、力のあるプロデューサーが、下請けから大金を巻き上げたという"個人営業"もある。
また、銀行を含めた消費者金融のCMはどの局も花盛りで、泣くのは"消費される者"ばかり。
11万余名の中止の署名を突きつけられたり、ある局では労組からの中止要望もあるなど世の批判も大きい。
しかし、たとえば、TBSの幹部は「収入は微々たる金額」という。ならば、止めたって影響がないだろうと思うのは世間の常識だが、
それが通じないのが、高給取りの別世界、テレビ業界の本質である。
「ボランティアで「5」をとる方法」
すでに、奉仕活動は小中高校の授業に取り入れられ義務化しているが、このたび(7月29日)、
中央教育審議会が高校や大学で奉仕活動の単位認定を行い、大学入試や就職活動で積極的に評価するよう求める答申を遠山文科相に出した。
曰く、奉仕活動とは「対価を目的とせず、自分を含め地域や社会のために役立つ活動」という。
つまり、今年度から「ゆとり」ある学生生活となり、その「余った時間」を有意義に使えということだろう。
しかし、(青少年は自発的には動かないから)校長を中心に奉仕活動を推進する体制作りをはじめ、
校内に地域連携した「サポート委員会」を設置せよともいう。
前にもこのコラムで書いたが(3月号)、ボランティア活動は自発的なものを指す。
手取り足取りやっても、彼らひとり一人が意義や喜びを見出さないかぎり、イヤイヤやることになるのではないか。
さらに、そうでなくても忙しい先生たちが、積極的にやるとも思えない。
そこで一つの提案だが、先生も生徒もともに喜ぶことは何か。
たとえば、週一回、校長先生の自宅の庭掃除や車を洗うとか、年配や独身の先生を訪問し慰めるとか、
アメリカの男子中学生と女教師の例もある。双方が"自分を含め地域や社会のために役立つ活動"と認めれば、
絶対評価「5」はまちがいなしであろう。え? 今ごろ"提案"しても遅い!?
番外[近ごろ、気になる言葉]
1.公共放送のニュースで、「警察は今後、・・・・・・事件(事故)のくわしい動機を調べることにしています」などとよくいうが、
これは「動機をくわしく調べる」というべき。殺人事件でも衝動的、無目的のものもある。
いまや"くわしい動機"などあるかどうか疑わしい事件ばかりではないか。
2.ある予備校のパンフレットに「親はよくよく考えるものです」とあるのを、 「親はくよくよ考える…」と読んでしまった。そのほうが現実的ではないのかと、早トチリして。
3.「入れます シニア入院保険」(アリコ)…これでは関西地方の加入は見込めないでしょうな。 なぜなら、「シニア」→「死にや」(「死ね!」の丁寧表現)と聞こえるから。
(以上、2002・8・14までの執筆)
kenha@wj8.so-net.ne.jp