『戰線文庫』研究
時には200万部以上も発行されたといわれるものですが、国会図書館や海軍関係者の集まり「水交会」にも保存されておらず、
今ではすっかり幻の雑誌となっております。
内容は海軍関係者のものもなくはありませんが、小説や"誌上封切"映画、浪曲や漫才などを総ルビで編集したもので、
当初は毎号238ページ、やがて200ページと減りましたが、敗戦の色濃くなるまで、編集方針は比較的のんびりしていたようです。
たとえば、創刊号の目次をみますと、菊池寛や子母澤寛らの小説、映画原作者は小島政二郎、林房雄、川口松太郎ら、
また柳家金語楼、廣澤虎蔵らの名もあります。
他に西條八十作の歌、映画女優では原節子・高杉早苗が「皇軍の皆々様 どうも有難う」といえば、
巻頭グラビアでは桑野通子・田中絹代・勝太郎・市丸などのキレイどころ17人が「頑張れ! 海軍の皆様/長期戦に感謝は愈々深し」と声援を送る、
という具合に毎号編集されております。
このように、さほど"戦意高揚"を謳ったものとも見えませんが、欠本分やいつ終刊したのか、
どのような経路で外地に送り届けられていたのか、私には分からないことばかりであります。
また、戦時における日本人の生き方、当時の出版事情、作家ら文化人の"戦争協力"の実態などの観点から、
これら資料の解読研究を試みようと考えております。
"研究"にどれぐらいの時間がかかるのか皆目見当がつきませんが、本欄その他で随時ご報告するとともに、
皆様に次のようなご協力をお願いする次第です。
関係者や外地でお読みになっていた方々も多くは高齢となり、また"敗戦"による混乱やGHQの言論統制などもあり、
各家庭にあっても廃棄されたことが考えられます。
しかし、もしやどなたか1冊でも所蔵されているとか、「よく覚えている」、「読者だった」といわれる方がいらっしゃれば、
お教え願いたく存じます。
2002・11・11 橋本健午

『戦線文庫』創刊号 表紙(伊東 顕)
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